エコキュートをお勧めしない理由③

これまでエコキュートをお勧めしない理由を二つ挙げさせて戴きましたが、今回が最後に
なります。3つ目の理由も寒冷地特有の事情ですが、「真冬に停電が起こると使用出来な
い!」という点です。私たちが住む秋田県の内陸部は真冬になると氷点下5℃以下になる
ことがしばしば有ります。時には氷点下15℃になる日もあるくらい寒い地域です。

そんな寒い冬場で悪天候により停電が起きることがたまに有ります。問題は停電時間や気
温によってエコキュートの室外機のある部分が凍ってしまい、停電が解消されても直ぐに
は使えない事がある
のです。この「ある部分」というのは色々なケースがあるので特定は
出来ませんが、その中でも特に多いとされるのが室外機と貯湯タンクを結ぶお湯の菅です。
この部分ははもちろん保温されてヒーターも巻かれているのですが、停電になるとヒータ
ーも止まってしまうので凍ってしまうんですね。管内が完全に凍ってしまうと停電が解消
しても直ぐには使えないので、水道業者による解氷作業が必要になります。まぁ、これで
直ればOKなのですが、そうならない場合もあるのです。

それは室外機内にある管の中の水が凍ることで膨張し、管を破裂させる危険性がある事です。
こうなってしまうと室外機は交換するしかなくなります。
さて、ここで問題です!
貯湯タンクは建物内部にあるので、まだ使えるとして、室外機はどれくらいの価格で購入
できるでしょうか?

「答え」:仮にエコキュートのセット価格が35万円だとした場合、室外機だけの購入額はザ
ックリですが、30万円くらい掛かります。

「セット価格と比べたら余り変わらないな!」と思った方も多いと思います。私自身もそう
思いました。でもこれには理由があって、「エコキュートとは貯湯タンクと室外機の二つが
揃って一つの商品である。」という事が挙げられます。つまり、「エコキュートを購入する
人は貯湯タンクと室外機を別々に購入する事は無い」という前提があり、室外機だけを購
入する場合は部品扱いとなり、セット価格の適用対象外になるのです。

だったら、いっその事「セットで買って全部新しくしちゃえ!」と考えられる人もいらっし
ゃるかと思いますが、今度は入れ替えに掛かる工事費や既存品の処分費などが多く掛か
ってくるのです。耐用年数にはまだ届いていない場合、これはお客様にとって実に悩ましい
事態です。そして更に厄介なのが、仮に交換したとしても同じ事が起こる可能性が有る
ということ
です。

これを書いていてもう一つ勧めない理由④を思い出しました(笑)。それはエコキュートの
「追い炊き機能」はほとんど使えない!
ということです。ボイラーだと浴槽内のお湯を火で
加熱して送り込むのですぐに暖かくなりますが、エコキュートは貯湯タンク内のお湯から熱を
奪ってお湯を送り出すので全然暖かくなりません。追い炊きをするくらいなら熱いお湯を足
し湯で出した方が早いのです。ハッキリ言ってエコキュートの「追い炊き機能」は飾りの装置
としか言いようがありません。「追い炊き」で節水を期待するお客様にとってはガッカリする
機能である事は知っておいた方がよろしいかと思います。

まぁ、こういった観点から「FORESTの家」ではエコキュートをお勧めしていないのです。
では弊社でお勧めしている給湯器はと言いますと「エコフィール」と呼ばれる省エネ性の高
い石油ボイラーです。「時代に逆行している。」と思われる方もいるかもしれませんが、少な
くとも私がこれまで挙げてきた4つの問題点は起きません。そして仮に交換が必要になっ
た場合でもイニシャルコストが断然安く付きます。省エネ性も高いのでランニングコストも
結構安く、私は『コスパ最強』だと思っております。こういう機器を選ぶ基準を一つだけ挙
げるとすれば私は『シンプル イズ ベスト』だと思うのですが、皆さまはいかがでしょうか?

エコキュートをお勧めしない理由②

前回、お客様に対して私がエコキュートをお勧めしない第一の理由「衛生面」に続いての第
二弾を送らせて戴きます。
第二の理由としては「取り替えが大変である!」という点を挙げさせて貰います。予め言っ
ておきますが、この「取り替えが大変!」というのは多雪地域のみを限定した理由になりま
す。「え!どういうこと?」と思われた方も多いと思います。多雪地域と一般地域で何の
違いがあるのか知らない人の方が多いので当然ですが、実は貯湯タンクの置き場所が全く
異なるのです。一般地域では貯湯タンクも室外機も外部に設置しますが、多雪地域では雪害
から機器を守る為に貯湯タンクは建物内部に設置される場合が多いのです。

さて問題はここからです。新築工事でエコキュートが採用された場合にエコキュート機器
が搬入されるのは、どの段階かご存知ですか?設置場所にもよりますが、多くの場合は木工
事の時でフローリングを貼り終えた後です。そして設置されるのは仕上げ工事が終了した
後ですが、この順序には理由があります。普通に考えると設置するタイミングで納品される
と思われるのでしょうが、その1か月以上も前に機器が納品されるのは貯湯タンクの大き
さに問題が有るからです。仮に良く使われる460ℓのサイズはメーカーによって若干の違い
が有りますが大体「幅630㎜×奥行760㎜×高さ2,160㎜」くらいの大きさになります。
この時点では本体に傷が付かないよう梱包されていますので、実際に建物内へ入れる際は
一回り大きな物体を運び込む事になります。

「なぜ設置する時に合わせて納品しないのか?」という点において、勘の鋭い方はもうお解
りかと思います。これだけ大きな物体でしかも重量が100㎏以上も有るモノを本体はもち
ろん壁や床、建具など何処にもキズを付けずに運び入れる事がどれだけ大変かは想像がつ
くと思います。だから工事業者はそのリスクを避けるためにわざわざ貯湯タンクを早い段
階で搬入するのです。こうする事で内部の何処にもキズを付けることなくきれいに設置され
て完成する訳です。まぁ、完成時はこれでめでたし、めでたしですが、その時点で数十年後
に起こる事態を考えた人は何人いらっしゃるでしょうか?

どんなに優れた住設機器でも耐用年数が有り、いつかは必ず交換をしなければならない時
がやって来ます。その時に貯湯タンクはどのようにして外に運び出すかを、あなたの設計士
は考えてくれていますか?冷蔵庫よりも大きくて重く、出入り口建具よりも背が高い貯湯
タンクを持ち運びだすのは至難の業です。しかも建物内部にキズを付けることもなく出す
となると更にハードルが高くなります。無事に出せたとして、今度は代わりの貯湯タンクを
搬入しなければなりません。逆に考えると今ある貯湯タンクが運び出せないとなると、新し
い貯湯タンクも運び入れられないという事になるのです。

私はかつて勤務していた会社で現場監督をしていた際に上記の疑問を持つようになりまし
た。図面上では整然としたレイアウトにしたつもりでも、メンテナンスの事まで頭が回って
いない設計士はたくさんおります。そして彼らに共通するのは「現場経験が殆どない。」と
言う点です。現場経験が豊富な設計士はデザインだけではなく、住み始めた後に起こるメン
テナンスの事まできちんと考えているものです。

いかがでしょうか?エコキュートを既に導入された方でこの問題に該当する方は今から対策
方法を検討し、その時に備える事を、そしてこれからエコキュートを導入する家を建てられ
る方は計画段階から取り替え可能な設計になっているかを設計士としっかり打ち合わせを
される事をお勧め致します。