新築住宅におけるフォレスト式床暖房の効果

先日、お客様の家にアフター訪問してきました。昨年11月にお引渡しさせて戴いたO様邸です。蓄熱式床暖房で初めて迎えた冬はかつて経験した事がない大雪と極寒の真冬でした。この日も最高気温が氷点下の寒い日でしたが、床暖房のリモコンの温度は「36℃」。ちなみにこの「36℃」という温度は室温ではなく、床暖房の配管の中を流れる温水の温度です。O様邸のお宅は改良型の床暖房方式で施工した新築住宅第1号なのですが、「36℃」という設定温度は改良前の床暖房では考えられない温度設定なのです。私はお客様に「いつもこの温度で生活されているのですか?」と質問しました。すると「これでも暑いくらいなんです。でも36℃未満の温度設定がなくて・・・。」と言う答えが返って来ました。少しご不満に思われているのかなと思いつつ「セーブ運転させればもう2℃は下げられますよ。」とアドバイスをしたところ、「床暖房がこんなに暖かいものだとは思わなかった。」と逆に嬉しい悲鳴を聞かされました。また、帰省された娘さんが和室に布団を敷いてお休みになったそうですが、その際に厚手の毛布1枚掛けただけで充分暖かかった事に驚き、更に大雪で濡れた靴が次の日の朝にはすっかり乾いて靴の中がポカポカに暖かくなっていた事で二重の驚きがあった事をお話してくださいました。我が家の床暖房は改良前の旧式ですが、だいたい「39℃」で運転しています。さすがに氷点下10℃の極寒日は「43℃」くらいまで上げないと暖かくなりません。ところがO様邸では常に「36℃」だそうで、やはり改良の効果の違いが数字で表れている事がハッキリと分かりました。

あと灯油の消費量についてもお話があり、灯油の消費量は例年並みだと言われました。こう聞くと「省エネじゃないじゃないか?」と疑問を持たれる方もいらっしゃるかと思います。これまでの住宅は局所暖房で暖房機器の有る部屋だけが暖かく、しかも機器を運転している時間だけ暖かいというものでした。建て替えた住宅は人が歩く全ての空間が24時間快適な温度で暖かくなっていて、灯油の消費量が以前と同じという事なのです。他のお客様から言われた言葉をお借りすると「今までの3倍の面積が暖かくなり、3倍の時間が快適になった。」と言う訳です。これを省エネと捉えるのか捉えないかはお客様次第ですが、少なくとも弊社で床暖房をご採用戴いたお客様からはお喜びの声が寄せられております。

最後に「暖かさの質の違い」について触れたいと思います。O様もおっしゃられておられましたが、「足の裏が常に暖かいので、身体も常にポカポカしている。」というのが床暖房の最大の特長です。この暖かさ、快適さは暮らしてみないと本当の良さは分からないと思います。弊社では旧式ではありますがモデルハウスで床暖房のご体感がいつでも出来ます。またご要望があればOB客様のお宅へ訪問して、直接生の感想を聴く事も出来ます。床暖房は大体4月くらいまで使用しますが、本当の良さを知りたければ12月から2月までの期間でご体感される事をお薦めします。「床暖房はめちゃくちゃ高額で、ランニングコストも悪い!」と言う方が多くいらっしゃいますが、確かにそういう床暖房も存在します。でもそうでない床暖房も有ることも知って戴きたく思います。他人の言う事を真に受けず、実際にご自身で体感してみてご判断される事を強く希望します。

「脱炭素社会」と「オール電化住宅」との関連性

日本のエネルギー・発電の供給量割合.pdf
昨今、「カーボンニュートラル」とか「脱炭素社会」などの言葉がテレビから多く聞かれます。この二つの言葉は同じ意味では有りませんが、今回は「脱炭素社会」と「オール電化住宅」について考えたいと思います。
本題に入る前に言っておきますが、私は決して「オール電化住宅」を否定するためにこの記事を書いているのではありません。むしろその逆でいつかはオールでは無いにしても電化住宅で家を建てたいと考えております。

さて本題に入ります。「脱炭素社会」とはその名の通り炭素(石炭、石油や一部の天然ガス)を使わない社会ですね。炭素を燃やすと二酸化炭素(CO2)が排出される為、地球温暖化が進むのでそれらを使わない社会にしようというのが本来の狙いです。そこで各電力会社が住宅会社と連携して売り出したのが「オール電化住宅」です。2012年の春までは新築住宅でのオール電化住宅シェア率は相当高かったと記憶しています。ところがです、『3.11東日本大震災』による福島の原発事故を境に状況は一変します。それまで毎日のように流れていた電力会社による「オール電化住宅」のコマーシャルが一つも流れなくなり、現在も放映されておりません。あの事故から今年で10年になろうとしているのに何故コマーシャルは放映されないのでしょうか?

実は当時の「オール電化住宅」と原発は密接な関係にありました。原発は稼働したら止める事が出来ません。深夜を問わず電気を作り続けます。でも深夜に電気を作っても日中に比べたら消費量は格段に少ない事は明白です。この深夜に作り出される電気を使って貰いたいが為に考え出されたのが「オール電化住宅」の始まりな訳です。深夜電気料金の圧倒的安さはお客様にとって魅力的であり、アッという間に「オール電化住宅」は日本中に普及しました。しかし、あの3.11で電力会社は苦境に立たされました。原発による電力供給が殆ど出来なくなったからです。

さてコマーシャルは流れなくなりましたが、今もいろいろな住宅会社で「オール電化住宅」が作られています。灯油やガスを使わない「オール電化住宅」がクリーンだと思っているお客様も多いようですし、住宅を作っている会社の従業員さんもそう思っているようです。そこで添付した資料『日本のエネルギー・発電の供給量割合』のグラフを見てください。現在、電気を供給している発電所の多くは火力発電所で、そのシェア率は80.8%。何と8割を超えているのです。その火力発電所で燃やされているのが石炭、石油、LNG(天然ガス)であり、内5割が石炭と石油が占めているのです。

つまり、現在「オール電化住宅」に供給されている電力会社の電気とは炭素を燃やして作られたものであり、弊社曰く「見せかけのクリーンエネルギー」に過ぎないと言うことなのです。要は炭素(化石燃料)を自宅で燃やしているか、発電所で燃やしているかの違いであり、やっている事は同じというのが弊社の見解です。

だからと言ってこのまま化石燃料に頼って良いとは思っておりません。そこで考えなくてはならないのが、本当にクリーンな「電化住宅造り」の構築です。まず日中は太陽光発電や風力、水力などで得られる本当にクリーンな電気を使う事。そして夜間はPHEV車などを蓄電池として活用し、電力会社の電気を極力使わないような設計をする事です。これはそんなに難しい事ではありませんが、通常よりもイニシャルコストがかなり高く付くのが普及への一番のネックとして挙げられます。また横手のような豪雪地帯では冬期間の太陽光発電量が期待出来ないという点も考慮しなくてはなりませんし、太陽光パネルの設置場所、PHEV車の充電場所などもしっかりと考えなければなりません。

自動車業界では水素を使った車が発売され、それに伴い水素ステーションの建設も徐々に進んでいます。何でも言える事ですが、世の中に無かったものが発売されると最初の価格は高額です。ですが、それが普及して当たり前の時代になると価格も安くなります。住宅のエネルギー事情も同様で皆が「見せかけのクリーンエネルギー」に惑わせれず、本当の意味で「脱炭素社会」を目指せば、実現出来るのではないでしょうか。

新年早々の大規模停電に思うこと

2021年1月14日魁新聞記事.pdf
秋田県の2021年は大雪に始まり、1/7・8の大規模停電で大混乱の幕開けとなった。この間だけはコロナウイルスよりもこちらの方が県民にとっては大きな問題だったと思われる。特に県最大の市である秋田市は大打撃を受けた事であろう。新聞記事を読むと「エコキュート」が故障とあり、パナソニック1社だけでも5日間で約350件の修理依頼があったと有る。真冬にお風呂に入る事が出来ないだけではなく、お湯が全く使えないと言うのは本当にしんどい。雪の降らない東京ですら同じ状況に陥ったら大変だと思うが、秋田県の冬は東京とは比較にならないほど厳しい。

エコキュートの販売店に故障の箇所と原因を尋ねてみたところ、次のような回答を戴いた。
「エコキュートの室外機の根本にある水道管が凍った事で多くの家で管が破裂した事例が最も多かった。電気が通電していれば問題は起こらないのだが、停電時の外気温が氷点下を大きく下回った事が大きな要因。」との事。これは「エコキュート」だけに限らず「ガス給湯器」でも同様の問題が起き、ガス給湯器メーカー大手のCORONAでも約400件の修理依頼が来ていると記事に有る。

ここで家づくりに携わる我々が考えなければならないのは、この厳冬期に起きた大規模停電による事故を今後の教訓として活かさなければならないという事である。「エコキュート」や「ガス給湯器」で事故を起こした機種の大半は外置きの機器である。FF式で建物内に設置したガス給湯器では殆ど問題は起こっていない。要は給湯器そのものを内部設置型にすれば良いのだが、「エコキュート」についてはヒートポンプ式室外機が外にしか置けないのがネックとなる。秋田市は秋田県の中でも比較的気温の高い地域であり、横手市と比較すれば降雪量も格段に少ない。ゆえに雪の降らない地域と同じような形で給湯器を設置しているケースが目立つ。しかし、そう言う秋田市も雪国である事は間違いなく数年に一度は大雪が降る。この数年に一度というのが判断を狂わせるのである。不測の事態が起きても、必要最低限の暮らしが出来るように考えて家づくりのアドバイスをする事が今後求められるものと考える。

横手市を中心に家づくりを行っている弊社ではFF式の灯油ボイラー(エコフィール)を推奨させて戴いているが、もしお客様から「エコキュート」を要望された場合の対策を早急に検討しなければならない。