「脱炭素社会」と「オール電化住宅」との関連性

日本のエネルギー・発電の供給量割合.pdf
昨今、「カーボンニュートラル」とか「脱炭素社会」などの言葉がテレビから多く聞かれます。この二つの言葉は同じ意味では有りませんが、今回は「脱炭素社会」と「オール電化住宅」について考えたいと思います。
本題に入る前に言っておきますが、私は決して「オール電化住宅」を否定するためにこの記事を書いているのではありません。むしろその逆でいつかはオールでは無いにしても電化住宅で家を建てたいと考えております。

さて本題に入ります。「脱炭素社会」とはその名の通り炭素(石炭、石油や一部の天然ガス)を使わない社会ですね。炭素を燃やすと二酸化炭素(CO2)が排出される為、地球温暖化が進むのでそれらを使わない社会にしようというのが本来の狙いです。そこで各電力会社が住宅会社と連携して売り出したのが「オール電化住宅」です。2012年の春までは新築住宅でのオール電化住宅シェア率は相当高かったと記憶しています。ところがです、『3.11東日本大震災』による福島の原発事故を境に状況は一変します。それまで毎日のように流れていた電力会社による「オール電化住宅」のコマーシャルが一つも流れなくなり、現在も放映されておりません。あの事故から今年で10年になろうとしているのに何故コマーシャルは放映されないのでしょうか?

実は当時の「オール電化住宅」と原発は密接な関係にありました。原発は稼働したら止める事が出来ません。深夜を問わず電気を作り続けます。でも深夜に電気を作っても日中に比べたら消費量は格段に少ない事は明白です。この深夜に作り出される電気を使って貰いたいが為に考え出されたのが「オール電化住宅」の始まりな訳です。深夜電気料金の圧倒的安さはお客様にとって魅力的であり、アッという間に「オール電化住宅」は日本中に普及しました。しかし、あの3.11で電力会社は苦境に立たされました。原発による電力供給が殆ど出来なくなったからです。

さてコマーシャルは流れなくなりましたが、今もいろいろな住宅会社で「オール電化住宅」が作られています。灯油やガスを使わない「オール電化住宅」がクリーンだと思っているお客様も多いようですし、住宅を作っている会社の従業員さんもそう思っているようです。そこで添付した資料『日本のエネルギー・発電の供給量割合』のグラフを見てください。現在、電気を供給している発電所の多くは火力発電所で、そのシェア率は80.8%。何と8割を超えているのです。その火力発電所で燃やされているのが石炭、石油、LNG(天然ガス)であり、内5割が石炭と石油が占めているのです。

つまり、現在「オール電化住宅」に供給されている電力会社の電気とは炭素を燃やして作られたものであり、弊社曰く「見せかけのクリーンエネルギー」に過ぎないと言うことなのです。要は炭素(化石燃料)を自宅で燃やしているか、発電所で燃やしているかの違いであり、やっている事は同じというのが弊社の見解です。

だからと言ってこのまま化石燃料に頼って良いとは思っておりません。そこで考えなくてはならないのが、本当にクリーンな「電化住宅造り」の構築です。まず日中は太陽光発電や風力、水力などで得られる本当にクリーンな電気を使う事。そして夜間はPHEV車などを蓄電池として活用し、電力会社の電気を極力使わないような設計をする事です。これはそんなに難しい事ではありませんが、通常よりもイニシャルコストがかなり高く付くのが普及への一番のネックとして挙げられます。また横手のような豪雪地帯では冬期間の太陽光発電量が期待出来ないという点も考慮しなくてはなりませんし、太陽光パネルの設置場所、PHEV車の充電場所などもしっかりと考えなければなりません。

自動車業界では水素を使った車が発売され、それに伴い水素ステーションの建設も徐々に進んでいます。何でも言える事ですが、世の中に無かったものが発売されると最初の価格は高額です。ですが、それが普及して当たり前の時代になると価格も安くなります。住宅のエネルギー事情も同様で皆が「見せかけのクリーンエネルギー」に惑わせれず、本当の意味で「脱炭素社会」を目指せば、実現出来るのではないでしょうか。