3.11から11年とオール電化住宅

東日本大震災から11年が経つ現在でも家に帰れない方や未だ行方不明の方、並びにご家族を亡くされた方々には心よりお見舞い申し上げます。11年という長い年月が経過しても地震は頻発して起きるし、なかなか安心して生活が出来ない方も多い事かと思いますが、一日も早く元の暮らしに戻れる日が来る事を祈っております。

大震災から6年後、私は生まれ故郷に自宅を建てました。まだ震災時の記憶が残っておりましたので、耐震性に関しては結構考えて施工をしました。大きな地震の直後は耐震面に人の目は行きがちですが、ある程度収まってくると意識が薄らいできます。あの時の強烈な恐怖をも薄れさせる『時の流れ』とはある意味で怖さを感じます。3.11の時は太平洋側に比べたら比較になりませんが、秋田県でも大きな被害は出ました。私の記憶で鮮明に覚えているのはインフラがストップし、その復旧に大きな差があった事です。特に電気の復旧が一番遅く、電気が来ないと殆ど何も出来ない事がハッキリと分かりました。それが教訓となって雪国横手であっても太陽光パネルを設置したり、オール電化にはせずに使用エネルギーを分散させて自宅を建設しました。

私の家には普段両親が在宅しており、近所のおばあちゃん達がよく遊びにやって来ます。寒い季節だと「ここの家ほどあったかい家はねーな(無いな)。」と皆さんが褒めてくれます。我が家より立派な家に住んでいるおばあちゃんも同じ事を言うので、私の母が「お宅はオール電化だから寒くなんかねーべ(ないでしょ)。」と返すと「なんとなんと家中全部暖房なんか付けたら月に電気代が10万円超えるから、普段いる所しか付けてないんだよ。ここみたいにどこ行ってもあったかくなんかなんねーよ(ならないよ)。」との事。局所暖房やって電気代が約8~9万円くらい掛かっているらしいのですが、それだと建替え以前の暮らしとあまり変わらないような気がしてなりません。

別の家のおばあちゃんは先日やって来て「病人がいるから家の暖房を付けっぱなしでいたら電気代が10万円を超えた。」と言い、「これからまた電気代が上がったら生活出来なくなる。」と嘆いていたそうです。この二人のおばあちゃんの家で共通するものは「オール電化の家」だという事です。私はオール電化の家で生活をした事がありませんので、どれくらい快適なのかは分かりません。ただ、お二人の話を聞く限りでは寒い横手ではお薦め出来るモノでは無いような気がします。オール電化の家を推進している住宅会社は今も多く存在していますが、私はこれまで「オール電化の家は快適で省エネ性も最高!」と言っているお施主様に出会った事が一度もありません。どちらかと言えば、「とにかく電気代が高い!」「電気代が高いから暖房のスイッチを一部切って暮らしている。」とかネガティブな話しか聞こえて来ないのです。にも係わらず「オール電化住宅」を選んで建てているお客様が後を絶たないのはナゼ?なのか不思議でたまりません。

そもそも今の日本の電気はどうやって作られているのかをご存じでしょうか?3.11以降原発の稼働が減り、日本の電力の8割は火力発電所に頼っています。この火力発電所で何を燃やして電気を作っているかと言うとそれは「天然ガス・石炭・石油」です。どれも化石燃料を燃やして作っているのです。電気はクリーンなエネルギーと思っている方が多いと思いますが、全くクリーンではないのが現実です。もし「オール電化の家」はクリーンな家だと思っておられるのであれば、ちょっと違うと思います。今のところクリーンなエネルギーと呼べるのは再生可能エネルギーと地熱・水力発電くらいですが、日本でのこれらのシェアは本当に少ないですね。ドイツのように国策として取り組む覚悟でやらない限り、いつまで経っても脱化石燃料・脱原発は絵に書いた餅でしかならないと私は見ています。でも、再生可能エネルギーを使って家の電気を賄っているのであれば、それは「クリーンな家」と言えると思います。

さて「オール電化の家」の電気料が高額な事は以前から知っていました。「いつもよりちょっと暖房を多く使うとあっという間に8万円を超える。」という話は4年前に知り合いの大工さんからも聞きました。更に昨年3月で終了した「深夜機器割引」の終了も要因一つになっていると思います。この割引終了が電気代を8万円から10万円に引き上げているのだと思いますが、この金額の高さは弊社の住宅と比較すると異常な高さです。確かにどんなに断熱性能の高い住宅であっても冬場の光熱費は高くなりますが、せっかく設けた設備機器を電気代が高く付くからという理由で使わずに我慢しているなどというのは本末転倒だと思いませんか?

私が思うに多くのお客様は光熱費がどれくらい掛かるのかを知らされないで建てているのではないでしょうか?特に1年の半分を暖房に頼る雪国横手の冬の暖房費を知らされていないのではないかと思わざるを得ないのです。でなければ購入後に前述したおばあちゃんたちのような話は出てくるはずが無いと思うのです。弊社の住宅の暖房は床暖房で熱源は灯油ボイラーです。床暖房はヒートポンプを使った電化型も可能ですが、この方式は寒冷地以外の地域であれば可能です。秋田でも横手のような極寒の地域では残念ながら電化型はパワー不足で役に立ちません。まぁ他に選択肢がなく灯油ボイラーを標準仕様としていますが、抜群の暖かさを誇ります。外気温がどんなに寒くても家中どこでも暖かいのです。蓄熱式なので余熱を利用する事で省エネ性にも優れていますので、全館暖房にしていてもオール電化の家より光熱費は数万円安くなります。

このようにランニングコストを抑えて真冬でも暖かく快適に暮らせる蓄熱式床暖房ですが、実はイニシャルコストも他の暖房機器と比較すると安く抑えられます。一言で『床暖房』と聞くとイニシャルコストもランニングコストもメッチャ高額なモノと思われがちですが、そんな事はありません。弊社ではこれまでに10棟以上のお宅で床暖房を施工させて戴いており、高評価を戴いております。これから家を建てられる方にはぜひ暖房をどの工法で行うかを真剣に考えて貰いたいと思います。横手は北海道に次ぐ日本で2番目に寒い地域です。全館冷暖房も魅力的だと思いますが、私はやはり暖房最優先で家を建てられる事をお薦めします