断熱性能は「Q値」ではなく「UA値」で表す

断熱性能を数字で表した代表的な指標として熱損失係数「Q値」があります。これは外皮総熱損失量を床面積で割った数値で、外皮とは断熱材が入る部位、つまり1階床、外壁、天井または屋根面を指します。Q値を計算する際、「同じ断熱性能を持つ材料」を用いて建物を建てても熱損失量を延べ床面積で割るため、同じ床面積であっても形状が複雑で外皮面積の多い建物のQ値は大きくなり、形状がシンプルで外皮面積の少ない建物のQ値は小さくなります。また形状が同じで面積だけが違う場合は延べ床面積が大きいほどQ値は小さく算出されます。この事からも分かるとおり、単純に「Q値」を比べただけでは建物の「断熱性能」や「省エネ性能」が優れているかどうかは分からないのです。

では、どうすれば建物の「断熱性能」や「省エネ性能」が優れているかを判断できるかですが、新しい省エネ基準として外皮平均熱貫流率「UA値」が採用されています。

「UA値」は外皮総熱損失量を外皮表面積で割った数値です。建物の形状や延べ床面積の大小によって算出される数値にバラつきが出にくい事から「断熱性能」や「省エネ性能」の数値がより正確なものとなります。既に平成25年改正省エネ基準では「Q値」から「UA値」へと指標が切り替わっています。アバウトで見る場合は「Q値」でも参考にはなると思いますが、正確な数値では無いことは知っておいてください。

これから横手市(近郊)で家を建てらる方へ

4月も20日を過ぎ、まもなくG.Wに入ろうとしております。ついこの前まで道路以外の場所はどこも雪で覆われていたのが嘘のように消えました。気温も日中は初夏のような温度になりますが、さすがに半袖を着て歩けはしません。私が住む横手市は12月から3月いっぱいまで雪と格闘しておりました。昨年の積雪量も凄かったですが、今年も負けず劣らず降り積もりました。2年連続で約2Mの降雪量にはほとほと泣かされました。これは私だけではなく、横手市民全員がそうだと思います。1年12カ月の内3~4カ月、つまり横手という場所は1年の1/4~1/3は雪と付き合わなけばならない地域だと言う事です。

さて、冬期間は太陽の日差しが滅多に拝めない地域ですから気持ちがやや沈みがちになりますが、雪が解けて暖かい春が訪れると気持ちも明るくなります。そんな季節の中で「家を建てよう!」とお考えの方は是非とも横手の雪を思い出しながら計画を立ててください。有名なハウスメーカーだからちゃんと雪の事を考えて設計してくれるとお思いの方、「そんな事はありません!」。横手で暮らして大雪の中で除雪や雪下ろしを体験した事がある、または現在横手市に住んでいる設計士ならともかく、「横手の雪」を知らない人が設計すると絶対では有りませんが、どんでもない家が建つ可能性があります。実際に私が秋田市のハウスメーカーに勤めていた時でしたが、設計一筋40年のプロが湯沢市の家を設計しました。この設計士は秋田市生まれで秋田市育ちで湯沢市には殆ど来た事が無いばかりか、雪降る冬の湯沢市なんて見た事もありません。結果は毎年のように大雪が降るとお施主様からクレームの電話が来ます。同じ秋田県内でも秋田市と横手市では気候がかなり違います。秋田市ではOKな事でも横手市ではNGな事はたくさん有るのです。

例えば屋根の形などは典型的な例です。横手の雪を知らない設計士が知らずにミスってしまうのが寄棟の屋根です。寄棟とは建物の四方へ屋根面を設ける形状の事を言います。これだと家の周り全体に雪が落ちてくるので、人の出入りが有る玄関や勝手口は危険な箇所となります。雪国の家の屋根は人が出入りする面には雪が落ちて行かないように考える事が基本ですので、どうしても屋根形状は切妻か片流れになります。あと無落雪という形状もありますが、個人的にはお薦めしません。理由は横手の雪の「雪質」です。湿気が多く、積もるとモノ凄い重量になります。もし雪下ろしをせずに1M以上も積もらせておくと何十トンもの荷重が家の構造体に負荷されます。問題はこの状態の中で巨大地震が起きた場合です。この雪の重量は瓦屋根の比ではありません。下手をすれば家が潰れる可能性もあります。不思議な事に雪が多く降っている時期に巨大地震が秋田県で起こった事が無いので、あまり問題視される事が有りませんでした。でもこれからの日本はいつどこで大地震が起こるか分からないので、危機意識を持って家づくりを考える事をお薦めします。

雪の無い季節に「家づくりの計画」を立てるとついつい雪害の事を疎かにしてしまいがちです。いざ冬本番を迎えた時に後悔しない家づくりが出来るよう、しっかり設計士さんと綿密な打ち合わせをしておきましょう