家賃6万円と住宅ローン6万円の違い

賃貸住宅に住んでいるか、持ち家に住んでいるかで毎月支払う住まいに掛かる費用の呼び名が変わりますね。仮に支払う金額が同じ6万円だとした場合、賃貸住宅であれば「家賃」、持ち家であれば「住宅ローン」になる訳ですが、お金の使い方としては意味が全く異なります。「家賃」は大家さんに払う賃貸料ですから、何年支払っても決して自分のモノにはなりません。片や「住宅ローン」は自宅を購入した際の返済金ですから、支払い年数に応じて自分のモノになっていきます。
住宅金融公庫が有った時代の「住宅ローン」は最長25年でしたが、今は最長35年で組むことが出来きるようになりました。よって月々の支払い額を抑える事が出来るため、所得の低い方でも家が建てられる可能性も広がってきております。なるべく若いうちに家を購入する事で自分が元気でいられる年齢で完済出来るように住宅ローンを組む事が理想的かと思います。

でも人によっては考え方が全く異なり、「一生賃貸生活」と決めて暮らしている方も世の中には多くいらっしゃいます。賃貸であれば土地に縛られる事なく、自分が住みたいと思った所へ簡単に引っ越す事も出来ますし、固定資産税を支払う必要もありません。部屋のどこかに不具合な所があれば、大家さんに言って無償で修理して貰えます。そういう気楽な所は「賃貸」の良さだと思いますので、それを良しと考えられている方に対する異見はありません。

ただ、「家を建てた方が良い」か「賃貸生活を続けた方が良い」かで迷われている方がいれば、私は「家を建てる」ほうをお薦めします。特にご家族で住まわれている方には輪をかけてお薦めします。なぜならば、もし自分に万が一の事が起きた時、つまり愛する家族を残して逝ってしまった場合の事を考えた場合に賃貸住宅と持ち家では大きな差が出てくるからです。ある日突然、自分がこの世を去った時に賃貸住宅に住んでいたら家族はどうなるでしょうか?奥様に稼ぐ力があって問題なく家賃が払えるなら良いのですが、もし払えないとしたら、そこを出て行かなければならなくなりますよね。家族の大黒柱がいなくなった事で家賃と生活費を残された家族で稼がなければならない訳です。これは亡くなられた人にとっては死んでも死にきれない事ではないでしょうか。

それに対し、持ち家の場合はどうでしょうか。住宅購入者の多くの方は金融機関で「住宅ローン」を組んで家を建てられます。その際に必ず『団体信用生命保険』、略して『団信』に入らされます。これは主債務者の方に万が一の事があった場合に住宅ローンの残債を無くしてくれるシステムです。つまり、一家の大黒柱だった方が亡くなられたとしても、その家から出る必要は無いのです。むしろ自分が死んだとしても愛する家族に財産を残せるのです。私が思うにここの違いは天と地ほどまでとは言いませんが、かなり大きな違いだと思います。

もちろん家を購入して掛かるお金は「住宅ローン」だけではありません。最初の年は不動産取得税、固定資産税は毎年掛かります。またメンテナンス費用も定期的に掛かります。そう考えると「一生賃貸生活」の方が結果的に安く済むかもしれませんが、自分の理想とする住まいで家族と過ごす時間はかけがえのないモノであり、何ものにも代えられない家族の財産になると私は思います。
年老いて死期が訪れた人間は病院ではなく、「家で死にたい。」と言います。きっと大切な家族と過ごした日々が忘れられないからこそ出てくる言葉なのではないのでしょうか。真に家とは自分の居場所であり、死に場所でもあるのだと思うのです。そういう場所を造り、育てる事に掛けるお金は決して無駄ではないと私は考えます。

今年はリフォームがお得かも!?

昨年の春に起こったウッドショックを皮切りにあらゆる資材価格が暴騰し、今もなお高騰が止まらない。コロナ禍だけではなく、ロシアとウクライナの戦争が大きく影響を及ぼしている。特にロシアからの輸入品が入って来ないのが本当に痛い。日本の建築業界では国産の木材が山のようにあるにも関わらず、殆どの住宅会社が輸入品を使っている。理由は「価格が安い!」。ただそれだけだ。日本の国土で人間が暮らせる場所は3割しかないと言われている。他の大部分は山である。その山の麓には多くの森があり、多くの木々が育っている。自分達の住むそばにたくさんの木があるのに、活用されるのはわずかな量の木だ。しかも伐られる木は細い間伐材ばかりで、構造材として使える木はとても少ない上に高額だから、誰も買わない。遠い異国の地で育った木の方が運送コストを掛けても、国産よりはるかに安いという点もおかしな話である。どうせ伐採しても輸入材より安くはならないからと言って、林業から離れる人もいる。
「地産地消」という言葉が叫ばれて久しいが、これは「食」だけに留まらず、ぜひ「住」の方でも考えて戴きたい。とは言え、高額な国産材をお客様へ押し付ける訳にもいかないし、我々のような工務店がどうにか出来る問題でもない。これは国策としてやらなければならない課題だと私は思います。普通に考えても北米や北欧そしてロシアから来る木材と地元で伐採される木では輸送コストに大きな差が出てくる。他に行う作業は国産材だろうが輸入材だろうが同じ工程を踏んで製材される。運送コストが抑えられるにも関わらず国産材になると輸入材の価格の2倍や3倍にもなるというのはナゼなんだろうか?実に不思議な話である。日本は資源の無い国とよく言われるが、木材に関してはたくさん有るではないか。国の偉い人達はもう少しこちらの事も考えて戴きたい。

いまロシアからの輸入材がストップすると構造材はもちろん、合板も作れなくなる工場が出てくるだろう。原材料が無ければ製品は作れないし、むろん供給もストップしてしまう。昨年だけで住宅価格は二次曲線を描くように価格が上がったが、この戦争で更に価格が上がる事は確実であり、これは住宅購入者を始め住宅産業に関わる全ての人に大きなダメージを与えかねない出来事として危惧している。ここまで来ると、もはや企業だけで問題を解決する事など出来るはずも無く、国が何かしらの手を打たない限りは現状を打開出来ないと私は考えている。

さて、前置きが長過ぎましたが本題に入ります。上記の事を前提に考えると、これから家を建てる人で建て替えかリフォームかで迷われている場合はリフォーム工事の方がお得と私は考えます。一番の理由は資材の購入費が抑えられるからです。勿論どんな住宅でもリフォーム工事の方が適している訳ではありません。中には建て替えの方が良い場合も有り得ます。でも、リフォーム工事が対応可能な家であれば、こちらを選ぶ事も得策な選択肢だと言えます。
リフォーム工事の最大の魅力はあるモノを再利用して使い、全く異なるライフスタイルの家に変えること。資材価格が高値で維持して行くのが分かっている現状では最良かつお買い得な選択肢の一つだと思いませんか?
また集成材ではない無垢の木で造られた住宅の場合、その木の強度は腐っていない限り全く問題なく使えます。なぜならば無垢の木の強度は伐採してから200年もの間ずーっと強度が上がり、1000年かけてゆっくりと元の強度に戻るからです。つまり、築30年、40年の家はまだまだリフォーム工事の対象物として考える事が出来ると言う訳です。